この日は、やっと、早乙女哲哉さんの天ぷらをみかわ是山居に食べに行くことになりました。
江戸文化が生んだ食の一つである天ぷらですが、同時期に開花した江戸の料理である、寿し、うなぎ、そばと比べると、全国に美味しいお店がたくさん存在しているわけではありません。他の江戸料理に比べると天ぷら文化の普及は、全国展開が遅いので、美味しい天ぷらを提供して下さる店が地方に少ないのが現実です。全くないわけではなく、函館にレジェンドがおり、名古屋にも美味しい天ぷらを提供する店があります。しかし、東京には、たくさんの天ぷらの名店があります。
五月女さんのことは、ここでご紹介する必要は無いと思われます。今回、お会いすることができ、少しお話しできたことに感謝いたします。五月女さんが「筑波山麓のそばが旨いよ。」とおっしゃていたので、近いうちに訪問してみたいと思います。何しろ、五月女さんは、「いろいろな物への目利きが普通ではないのだ!」ということを、今回の訪問でたくさん感じましたので、五月女さんのお話なら、間違いなく美味しいのだと思います。
祇矢羅李二十代三十代「ぎゃらりーにじゅうだいさんじゅうだい」と読む。
このギャラリーは、五月女さんがコレクトした伊藤若冲の掛け軸を公開しています。その公開方法は、伊藤若冲のタッチまで肉眼で確認できる距離での展示です。こんな贅沢ですが、危険な展示はまず他にはないでしょう。五月女さんとは50年来の友人といわれる方が、ここのギャラリーを管理されていて、伊藤若冲のこと、五月女さんや五月女さんの所蔵する美術品のことなどお話を伺うことができました。五月女さんは、だいぶ以前の伊藤若冲が無名の頃から、この絵は凄いと集められていたそうです。伊藤若冲をこんなまじかで観察し、たくさんのお話をうかがえる。それも、タダで。御礼申し上げます。
1か月前のことです。みかわ是山居のホームページにこのギャラリーのことが掲載されています。これに気づき、わたしの訪問日とギャラリーの開館予定日をみると、当日は閉館の日でした。折角うかがうのですが、伊藤若冲には会えないなと思っていたのです。
しかし、あきらめが悪い私は、一週間前にお店に電話で連絡し、伺う日とギャラリーの開館日が合わないことを伝え、たまたま開くということが無いのかを確認したのですが、やはり当日は閉館ですとの回答でした。普通は、ここであきらめるのでしょうか?私自身もあきらめていました。
ところが、当日、用事が早く終わり門前仲町に予定より早く到着したのです。門仲は、20年前に住んでいた月島から橋を二つわたるところにあり、当時は毎週ここに遊びに来ていいました。路地の隅まで知っている街です。
そうだ、ぶらぶらしてみようと、街の中を歩きだしました。富岡八幡宮にお参りし、ギャラリーも閉館ですが、場所だけでも見てみましょうか?ということで、ブラブラの方向をギャラリーの方向である月島への道に向けました。この辺りにあるのではと道の左右を確認すると、ギャラリーとは思えない外観の建物に、「伊藤若冲」という文字があります。「ここか!」「あれ、人がいる。」「覗いてみる。」と、扉を開けると、「どうぞ。」と迎えて下さりました。中には、相当数の伊藤若冲です。
世の中は、諦めないと叶うことがたくさんあります。願っていると叶えられるものです。
いよいよ、みかわ是山居に到着。HPにある写真のままの外観の建物を入ると、気持ち良い声で迎えて下さりました。「まだ時間があるので、3階でお待ちください。」と、通されます。3階の待合室には、たくさんの美術品が展示されています。所蔵品の一部が展示されていて、今日は硯の展示でした。部屋中に硯が展示され、中国の有名は硯石、韓国の有名な硯石が無造作に展示されています。その中には、有名な作陶家の茶器も展示があります。これらの茶器は、ここで開催されるお茶会で使用されるそうです。「これらの茶器を普通に使うの?」という驚きでした。これらの茶器で渡された一般方は緊張するだろうなと想像してしまいました。
入り口から奥の、五月女さんが天ぷらを揚げるのが良く見えるところに案内されました。ご挨拶をして、料理開始です。私は一人で伺ったのですが、お隣の方も一人でした。これも何かの縁です。大変良い出会いをすることができました。
相当の美食家の方で、みかわ是山居の常連でもあり、五月女さんのことも良くご存知です。色々とお話を伺うと、いろいろな有名なお店の常連のようです。気持ちの良い方で、かつ、礼儀正しいしっかりした若い方です。この方に、色々とご教授いただきました。たいへん楽しくて、うれしいディナーとなった一夜でした。また、お会いできることを楽しみにしています。
飲み物は炭酸水。料理は、先付から開始です。
大根おろしは、好きなだけいただけます。わたしは天ぷらの合間に大根おろしに天つゆを加えて、箸休めにいただきました。
さいまき海老
衣と油による蒸しと脱水の加減がすばらしです。蒸しながら衣が減水される事による、タネへの熱入れと、衣の脱水と並行するコゲ生成のバランスの芸術ですね。結果として、衣はカラッとし、海老の風味が出て、芯のみ半生で甘みを存分に感じられる揚げになっています。
さいまき海老の頭
これを口に運んだ際に感じたことがあります。「海老を揚げた油と、頭を揚げた油は違う。」「頭の方がごま油の香りがほんの少しだけ強い。」「なぜ。」
二つ目の頭が前にきました。もう一度確認。やはり、ことらの方が最初の海老よりごま油の香りが少しだけ強い。
隣の美食家の方に聞いてみましたが、「初めて聞きましたが?」とのこと。
意を決して、五月女さんに聞いてみると、「そんなことないよ」と言うような目と微笑みで返されました。しかし、少しなのですが違うのです。
この段階では分からなかったのですが、この後に、五月女さんを観察していると気付いたことがあります。五月女さんが使われている揚げ鍋はそんなに大きなものではないのです。そして、何かのネタを揚げ終わると鍋の脇に置いてある一斗缶を持ち上げて、その中の油を揚げ鍋に追加します。加える一斗缶は2種類あります。この油の量の微妙な加え方で、香りを調整しているのだと思いました。故意に香りを変えたのか、あるいは、変えてはいけないのが変わったのかはわかりません。私には、この違いによる海老と海老の頭の天ぷらの違いが美味しいなと感じました。
次回伺うことができれば、もう一度尋ねてみたいなと思います。
キス
江戸前の天ぷらの王道の一つです。キスの味が最大限に引き出されています。元々、味の薄い魚ですが天ぷらにすると大きく変身する魚です。キスは、油と衣との相性が良く、油の旨味と、キスが蒸されることで生まれる旨味とのバランスが勝負だと思います。油が強すぎると旨味が消えてしまいますが、これは抜群に美味しかったです。
墨イカ
厚く切られたスミイカのアルデンテでした。
お吸い物
うに大葉巻
ウニの天ぷらを出される店が増えていますが、だいぶ前から提供されているのがこの店だと何かで読みました。うにに油が加わり炭水化物の焦げが加わるのですから、まずいわけがないです。もっとまん丸の形(ボールのような厚いウニの塊で造れたら)のウニ天ぷらならどんな味になるのかな?と想像しながらいただきました。真ん中がヒヤリとしていて外はアツアツ。アイスの天ぷらのようなウニの天ぷら。だれか造らないかな??
たらの芽
この季節の食材で、私が最も好きな野菜です。美味しかったです。ありがとうございました。
しらうお
今年はありがたいことに、先日寿司で白魚をいただきました。今日は天ぷらです。
天ぷらでの白魚は、食感は柔らかくタンパク質が少し固化するので特有の香りが出ます。生とは違う美味しさを堪能しました。どちらも好きです。二人前あっても・・・よいかも。
めごち
江戸前天ぷらではよく使われるお魚です。小さめのめごちは、たいへん味が濃くてビックリです。ここまで強いインパクトのめごちの天ぷらは初めてでした。食材も良いですし、揚げ具合はそれを引き出しています。これも、二人前でも。
穴子
みかわ是山居の穴子の天ぷらは皆さん評価が高いと思います。
野菜は5種類用意されています。2品選んでくださいと言われ、最初から食べてみたかったアスパラとさつまいもをお願いました。
するとお隣の常連の友が、「追加でお願い。」と言われたので彼に伺うと、「追加できますよ。」とのことです。すかさず、「椎茸と茄子もお願いします。」
ししとうを除いた4種をお願いしました。
江戸時代の江戸の天ぷらは、東京湾で採れる魚貝を揚げるものをいったので、野菜を油で揚げるものは天ぷらではなく精進揚と呼んで別者扱いでした。今は、野菜のてんぷらの人気が高いので、多くの店で野菜の天ぷらを出します。
4種の野菜天ぷらはどれも美味しかったです。ごちそうさまでした。
最後は天丼か天茶から選択です。私は天丼をいただきました。濃いめの天丼用の汁が美味しかったです。これは、関東人にはあいますが、関西の人は難しいかもしれません。超関東風天丼で、しっかりとした汁を使って丼にしていますので。関西の方には天茶が良いでしょう。たぶん。
最期に花豆甘煮でした。素朴ですが豆が美味しい甘煮です。
ギャラリーから花豆甘煮まで、書ききれないほどに、いろいろとありました。
取り敢えず、楽しい日でした。お会いした皆さんありがとうございました。
MEMO
摂取熱量:1,426kcal
お代:約21,000円
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