2018年4月26日木曜日

食べ歩き(140) 秋田みかわ 天ぷら 秋田市

秋田みかわ

今回は開始時間を遅らせていただいたので、到着するとカウンター席はほぼ満席で、既に天ぷらは開始されていました。カウンターでけでなく、小上がり席にも入られていて、北嶋親方は、大変忙しそうです。忙しいのは、良いことです。

席に着きしばらくすると、最初にトリ貝の刺身、シドケとコゴミのお浸し、行者にんにんくとヤリイカに温泉玉子黄身を合えた小鉢が出されました。行者ニンニクと玉子の黄身が大変良く合います。韮と玉子が良く合うのと同じように行者にんにくも相性がよさそうです。秋田はこの時期は山菜の宝庫ですですので、山菜の料理、特に天ぷらは最高です。今日は、秋田前の山菜天ぷらを秘かに楽しみにして伺ったので、幸先よく山菜のお浸しで、まずはそのものが持つ味を楽しませていただきました。天ぷらにするとこの味が凝縮し、油との相性でうま味が増すのが楽しみです。


さて、天ぷら開始です。
車エビを揚げ時間を変えて二つ続きました。揚げ時間で、海老のうま味凝縮と水分量の減少がもたらす違いがハッキリと分かります。どちらが好きかは、その方の好みによるでしょう。

天ぷらにもさまざまな物があります。私自身は、全くの素人ですが、天ぷら料理を次のように捉えています。天ぷらという調理方法を最大限発揮して、しっかり限界まで揚げきる方法。限界まで天ぷら調理を削ぎ落して、素材の生のうま味を活かす方法。よって、食材の熱が加わったところと生のところの両方のうま味を味わうことになる。素材自体に手を加えてよりうま味を増した素材を作り天ぷら調理法で最大限良さを引き出そうとする方法、などなど。色々な哲学と目指す方向があるようです。また、これらの何れかを哲学として、他のやり方を一部取り入れているのが現在の天ぷら店なのではないかと捉えています。私自身は、限界まで揚げきった天ぷらが好みです。

エビの頭が続きました。今日のエビの頭で感じたのは、前回に比べて胡麻油がほんの少しですが香りが立ったと感じました。好みで言うと、こちらの香り立ちのエビの頭が美味しいなと感じます。

実は、ここから山菜が続いたのでした。予想的中で嬉しい限りです。
山菜ホシアグラ、タラの芽、こごみ、ウドと山菜4連続でした。それぞれの山菜にて、味、香り、食感が変わります。また、揚げているのでそれぞれの山菜の味、香り、食感が強化されてうま味が増します。先付で出された山菜とこの山菜4連続を比較検討してみると、天ぷらにすると、山菜のうま味が凝縮してうま味が増すことと、香りが増すのでうま味が強化される食材なんだなと改めて感じました。何はともあれ、旬で産直の山菜の天ぷら食べ比べは嬉しい限りです。


続いて、今年初の稚鮎です。この時期に稚鮎ですかと尋ねると、「秋田の県北で鮎を養殖していて、そこから入荷します。」「県北の養殖鮎は、滋賀に送られ琵琶湖で放流されて捕獲されると琵琶湖産鮎となり高値になるんです。」のようです。秋田には、実は美味しい食材がいっぱいあります。鮎も、河豚も産地なのに知られていなのが残念ですね。
稚鮎は蓼酢おろしが添えられました。超定番ですが、これは理にかなった組み合わせなのです。鮎の苦みとタンパク質に、蓼酢の蓼の辛みと酢の酸味にだしのうま味が加わります。これにより、多くのうま味のレセプターを刺激するので、一層美味いと感じるのです。昔の方は、凄いです。科学的ではなく、感覚的に稚鮎には蓼酢を添えるようにしたのですから。揚げ具合、鮎の苦みと香りに蓼酢がマッチした大変良い天ぷらでした。

次は、富山産白エビです。前回は白魚でしたが、これが時期を過ぎ白エビになりました。白エビも美味しい食材でした。

メゴチ、はふんと紫ウニの大葉はさみ揚げと続き、ギンポが出ました。


ギンポは、天ぷら業界では、「銀宝を食べずして天ぷらを語る無かれ」「江戸っ子たるもの、借金してでも春は銀宝を喰え」と言われるほど昔から天ぷら向け食材なのです。しかし、食べたことが無かったので今回が初めてです。親方曰く「ギンポは処理が難しく、刺身でも焼いても煮ても食べると小骨が気になります。しかし、天ぷらでじっくり揚げることで小骨が気にならなくなります。ギンポの天ぷらは有名ですが、次期が短いです。」
穴子より身がしっかりしていてもっちりしています。大変おいしい食材でした。

鮑、墨烏賊、江戸前キス、ホタテ、大潟村アスパラガス、椎茸、紅あずまさつまいもが続きました。最期は、対馬産穴子で天ぷら終了です。

食事は、芝エビのかき揚げ天丼と山菜天茶をいただきました。甘味はあまおうのシャーベットでした。北嶋さん曰く「気持ち良い食べぶりで。」とお褒め or お叱りを頂戴して終了でした。


最後にいただいた、山菜かき揚げの天茶をいただいて感じたのは、だしに入れたことで山菜の香りが立つということでした。女性向けです。ここでアイデアが浮かびました。おそばの文化で「ぬき」と言う文化があります(江戸にも有ったのですが(東京には全くないわけでなく、メニューにある店もある)、今は釧路のお蕎麦屋さんを中心に北海道では普通のメニュー)。これは、天ぷらの温かいそばつゆ(かも南蛮等の)に、そばを入れないで出す、即ち、ソバが無いかも南蛮のような物です。これを、山菜かき揚げ天茶で出したら良いのではないかなと感じました。ちょっとしたメニューが看板になることもあるので面白いかもです。秋田発の呼び名、女性にはご飯が無いので抵抗が減るので食べやすい、何しろ天ぷらとしても美味しいし、吸い物としても一番だしに油が加わるのでうま味が増します。色々と広がるなと思います。

食後の雑談の中で、北嶋さんに話すと、「天吸」と言うのがあるのでそうです。これまでのキスの天吸とは異なる料理になるとは思います。なにしろ、だしはたっぷりでお茶漬けの量に山菜かき揚げを入れて香りが立つのを楽しむので。多分、誰かがそのうちに始めるかもしれませんね???   ウマイを追及している方がたくさんいるので。

北嶋さんの天ぷらは、前回に比べて美味しくなっていると感じました。もちろん食材が違いますが、ブレが少なかったと思いました。これから益々成長されると思いますので、楽しみなお店です。五月女親方と世代交代することを祈念してます。

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