2018年4月12日木曜日

食べ歩き(135) 丸新 日本料理 郡山市 

棚倉の小判寿司の和知さんからの紹介で郡山市の丸新の熊倉誠さんのお店に伺いました。
郡山駅前の道を真っ直ぐに行くと少しだけの登りになっています。ゆっくりと歩いて20分ほどで到着です。店構えが大きくて驚きました。数年前に移転と何かで拝見しましたが、立派なお店です。

緑色の暖簾がかかる門を通り奥へと石畳を進むと入り口があります。それを開くと正面には立派な桜のいけばなが出迎えてくれました。暖簾からここまでで圧倒されてしまいそうです。


中に入ると左手にカウンターがあり、そこに親方の熊倉さんが出向かえてくださいました。すでに奥の席にお二人が食事を開始されていました。ご挨拶して通されたのが熊倉さんのまな板の真ん前の席でした。

熊倉さんは、笑顔が素敵で、かつ、気さくな方で、福島弁??を操られます??
店構えと熊倉さんのキャラクターとのギャップもあり、面白いお店です。いきなり魅せられて大好きなお店になってしまいました。5月のランチと6月の私の誕生日に予約です。

色々なことにチャレンジされているようです。今週末には郡山で食の祭典を企てられていて、ここでは熊倉さんと和知さんのコラボがあるそうです。天気予報が雨なので心配されていました。案内状では市民の方を対象としたイベントのようです。

今日もおまかせでお願いして、いつものように飲み物は炭酸水です。

最初の料理は、季節野菜のだしゼリー寄せです。
だしゼリーは、本枯節血合付きで煮出しただしをゼリーに固めています。野菜はスナップえんどう、水菜やグレープフルーツです。これらの野菜と果物を、「だしゼリー」がまとめてくれます。鰹だしなのでイノシン酸を中心としたうま味を十分に感じさせます。水菜の香りと食感がアクセントになっていて美味しい野菜寄せでした。

二品目は、お吸い物です。地元産アイナメと筍のお吸い物でした。だしは、昆布と鮪節で引いているそうです。一品目で使用されているだしとこのお吸い物のだしは全く異なるものでした。香りが立っていますし、昆布のだしを感じます。アイナメを口に含むとフワットした食感で、ほろほろと砕けて消えていくようです。地物のアイナメだそうで、相当自信をもって提供されていました。確かに美味しいアイナメのお吸い物です。


向付は、富山産海老と海老の頭、イカ、鯛です。
加えて、熊本産の神経〆のサバは肉のような旨みをもつ大変おいしい鯖です。ついで、スズキの回りを蒸して真ん中は生の蒸しスズキです。蒸されたスズキの白身がとろっとしていて、真ん中は刺身の食感と味があります。回りのとろっとしたスズキの美味しさを楽しむと奥から刺身の美味しが追いかけてきます。全ての刺身は何も付けす、あるいは、岩塩を1粒付けていただきました。魚のうま味がそれぞれ活きています。



続いて、焼物です。鯛松笠揚げ、長崎産のノドグロ、鱈子、浜ゆでのホタルイカに付け合せに大根をだしにて湯がいた後に唐揚げしたもの。全て、食材も大変良いもので、料理としてはオーソドックスですが、一つひとつが本当に美味しいです。大根の唐揚げと紹介されたのですが、なにかうま味があり、唐揚げにすると味が凝集してうま味を強く感じるのかな?と熊倉さんに尋ねると、ニヤリとしてから、「じつはだしで湯がいてから揚げているんです。」やはり、細かなところで仕事してます。


酢の物で箸休めですが、休むわけにいかない箸休めです。
蒸したての相馬産毛蟹で、少し温かさが残る毛蟹です。温かい毛蟹はカニの甘味と独特の旨味を強く感じさせます。これは良し悪しで、カニの持つ独特のエグミを感じさせることもあります。良い状態の毛蟹は温めるとうま味が増して大変おいしく戴けるのですが、少しでも状態が悪いと、カニのエグミが気になることになります。そこで、大抵の場合は冷たい状態で毛蟹を提供することが多いのです。この毛蟹は相馬産の毛蟹で大変良い毛蟹でした。北海道で温かい毛蟹を自信を持って提供されたのは、過去に釧路の絹だけでした。温かい毛蟹は本当に久しぶりです。この毛蟹だけでも凄いなと感じたのですが、この毛蟹のために、3種類のつけ汁、と言うより、3種類の付け合せが付いてきました。一つ目は、土佐酢のゼリーです。二つ目が、鯛やアジなどの白子にレモン酢や煮切り酒等で整えたもの。三つ目が、カニみそだけなら普通ですが、これに地元産の胡麻油を少し添えたもの。カニみそだけでも美味しいのですが、これと胡麻油が大変良く合います。この胡麻油は田村町産の胡麻を二本松で絞っているものだそうです。「緑色」したこの胡麻油は美味しいですが、一般には販売していないそうです。熊倉さんにお願いして、次回伺う時までに取り寄せて下さるということになりました。ありがとうございます。




続いて、焼いたホワイトアスパラに柔らかいみそに岩塩と黒い粒と一緒にと言うようなものでした。この時期の焼いたホワイトアスパラの独特のうま味と食感が良いです。これに、添えられた黒い粒が大変良いアクセントになっています。この黒い粒は初めてでした。黑胡椒を茹でるか何かして柔らかい食感を生み出し、胡椒の辛さを極力抑えて良い香りだけを感じさせるように仕上げるのかな?と思い尋ねると、「生の黑胡椒です。」とのことです。生の黑胡椒はこんなに美味しいのか?とびっくりです。「和食では、胡椒はあまり使いませんが、これは面白いです。」と続けられました。色々と勉強されています。

北海道産海胆と相馬産鮑の天ぷらです。どちらも素材の勝利です。ウマイです。
ウニはとろけます。鮑は食感、硬さ、うま味、揚げ具合ともに申し分ない美味しさですし、ボリュームもありますので、これでもかというほどです。本日のメインデス。
相馬産鮑は産地から近いから出せる味なのだと思います。相馬産がしばらく無かった時と比べると少しずつ相馬産という声が聞こえるようになって来ています。熊倉さんのところもそうですが、仙台のお店でも、これは相馬からですという声を聞くようになりました。まだ、昔のようではありませんが震災から少しずつですが戻りつつあるのです。

洋食的にはメイン料理で、牛ステーキに牛蒡のクリームと在来種蒟蒻芋によるこんにゃくの付け合せ(肉の下なので見えない)です。牛肉は味噌漬の後に、数回焼きとさましを繰り返して火入れするそうです。牛肉のうま味を凝縮したような美味しいお肉です。以前からお客さんから肉は無いのというリクエストがあり、最近ではお肉料理を提供するようになったとお話されていました。肉の取り扱いもさすがです。大変おいしく仕上げています。
また、付け合せのこんにゃくは、最高でした。福島の在来種の蒟蒻芋から、昔ながらの製法で作り上げているこんにゃくだそうです。ある意味、これが本当のこんにゃくなわけです。普段いただいているコンニャクとは全く異なる食べ物です。普段いただいているコンニャクは何なのだろう??実は、普段のコンニャクも大好きなのです。
「是非一度、このこんにゃくを味噌田楽で食べてみたいですね?」と無理なお願いをしてしまいました。「では、次回に。」とおっしゃっていましたが、本当にいただけたら幸いですね。

食事の前に酢飯でした。
ご飯に白子を加えて混ぜ、ベーコンを数切れ加えて、3年物の赤酢で〆ています。「白子とベーコンに酢が合うのか?」と思ったのですが、酢が良いバランスを保つことになっているのと、海苔も効いています。面白いですし、お試しあれと言う一品です。


最後に食事です。
味噌汁は、郡山特産のナメコの赤だしでした。昆布だしに追い鰹をして香りを立たせただしに、赤味噌と八丁味噌のブレンドだそうです。昆布だしのうま味に追い鰹の香りが効いていて、そのうま味と香りに八丁味噌のうま味と香りが乗るので両者が相まって良い味と香りです。只者ではない赤だしでした。

蕎麦は、会津のかおりの十割の手打ちそばでした。玄そばをそのまま挽いて微粉部分のそば粉によるものと推察されます。60メッシュ位で篩ったそば粉ではないかと思います。そば汁は、かえしを用いずに、昆布だしに鰹の煮だしと味醂と濃口醤油で整えています。「最後の料理なのでそば汁に強い印象を残さないように、かえしの汁は用いていない。」とのことです。
小職のそばの方のブログに記載していますが、同意見です。強いそば汁は全ての味を汁の味にしてしまうほどに強烈なインパクトです。現在の旨いそば店=つゆが旨い店という構図が見られるのが残念ですが、これも、そばの香りがしない蕎麦が殆どなのでやむを得ないと思います。これに立ち向かうそば店が出てきていて、それを支持する方も少しずつ増えてきていることに、希望の光が見えてきてはいますが??!!

デザートは、エックスベリーというイチゴのジェラートでした。エックスベリーは福島産で、現在注目のイチゴです。甘くて濃厚で中まで真っ赤で幻のイチゴと言われています。果汁とそれを煮詰めてジャムにしたものを用いてジェラードにしているそうです。あっさりとしていますが、イチゴ味が濃厚でした。2つも付いていてラッキーです。

大変楽しい食事でした。熊倉さんの仕事ぶりは大変細かなところに手を加えています。しかし、それをあまり前面に出さないところが福島県人的なところなのだと思います。時々垣間見られる「余り回りに気づかせない静かなドヤガオ」が素敵でした。

メモ
価格 : 14,850円
熱量 :  1,154kcal

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