2016年11月9日水曜日

食べ歩き(80) そば 大石田 そば切り源四郎

<本文は、「ブログ;一期匠 Ichigosho 蕎麦 Soba」を転記したものです。>

2016年新そば巡りと言うほど大げさではありませんが、新そばの在来種を求めて、昨年に引き続き山形県大石田地区の在来種である来迎寺ソバの十割そばを求めに行ってきました。その第一弾です。

昨年、この地の在来種である来迎寺ソバ種による蕎麦は、この大石田地区でしか味わえない蕎麦です。元々、栽培面積が大きくなく(170ha、75トンの収量:村山総合支庁農業技術普及課)、その割にそば屋が多いので、他の地域へ回るソバが無いというのが正直なところのようです。

昨年訪問の際に、半日同行していただいた、地元のタクシーの運転手さんの話では、この大石田地区で、あるいは、隣町の村上の超有名店でも、一部の店では最上早生を提供しているそうです。この新そばの時期には、来迎寺在来種が味わえるが、その先、月数が進むと、それだけのソバがあるのか分からないというお話でした。全く異なるソバ種を用いて提供することは無いのでしょうが、ある程度他種を加えての提供になることはあるのではないか?と疑問に思うというお話をうかがいました。現在は、そば種を確認するお客さんも多いので、ブレンドであればそのように、一品種であればそのそば種を明らかにしているお店が多いとういう話をした記憶が蘇ります。

さて、新そばの来迎寺在来種を求めて、2016年最初に伺いたいのは、昨年伺ったそば切り源四郎です。
一週間ほど前に電話で、「昨年に引き続き、今年も十割そばをお願いしたいのですが?」と問い合わせると、快く「了解、急がずにゆっくり山まで来て!」という返事をいただきました。これで、来迎寺ソバ種の粗挽き粉十割蕎麦を今年も味わえます。

昨年、そば切り源四郎の森様を訪れた時のことを思い出します。大石田で蕎麦を食べようということで、Webや大石田町のそば街道の情報を基に、数店舗ピックアップし、来迎寺在来種のソバで十割そばを提供している店をピックアップしました。15-6店舗ある中で、この条件を満たすのは数軒でした。かつ、訪問した時に営業している店を探すと、なんと2店舗だけでした。最初に、最も有名なお店に行き、味わいました。この店では、来迎寺在来種を微粉に挽いたそば粉を用いた十割蕎麦で、大変おいしくいただきました。

その後に、もう一店舗伺うと、そこでは、今日は十割は無いということで、断念。どうしても、もう一軒行ってみたいということになり、電話攻撃で、「十割・・・十割・・・」と、聞いて回り、数件目でそば切り源四郎さんに電話したところ、「十割食べたいなら、今から打ってあげるから、30分後に来てください。」という、嬉しい返事でした。

訪問すると、そもそも十割そばを提供しようと、店を開ける準備をしていたそうで、それが、開店前になり、知り合いや家族やらと試し打ちをしていると、十割より二八が美味しいということになったそうです。ご主人は、二八での蕎麦を本意ではないが、回りの意見に沿い二八で商売を始めたそうです。しかし、そもそも提供したい十割蕎麦なので、店の片隅に「十割あります」と書いて、お客が求めれば打つということにしたそうです。そういえば、小さな紙に書いてあります。ということですので、店主としては「十割食べたい」というお話は、願ったり叶ったりということだそうで、「全然面倒ではない。」ということでした。

これは今年の店内、昨年より大きな「十割」の文字

十割蕎麦の美味しさを、理解してもらえないのが残念だという話でした。昨年、店主の森様と話しをしていて感じたのは、今時の方々は、そもそも、生まれた時からつなぎの入った蕎麦しか食べていないので、「二八で蕎麦と小麦の香りを感じ、ツルットしたつなぎ特有の喉越しが、美味しい蕎麦なのだ。」という認識をしてきたヒトが殆どなのではないだろうか。また、現在の日本では、米の主食に追随してパン食が多く、そういう私もパンが大好きで、ドイツパンに至っては目がありません。ドイツパンはライ麦文化でした。それはさておき、日本での小麦食は、当たり前の環境です。お菓子に至っては、古くからある日本の駄菓子や田舎の煎餅(南部せんべいが代表)等は小麦が原料です。それにバターを加えると、クッキーやケーキ等の洋菓子になります。どちらも、主原料は、小麦粉であり、そもそも、小麦が大好きな日本人であることを、この時、再確認しました。
そういえば、達磨の高橋さんのお店は、超人気店ですが、二八ですね。二八vs十割論争は、これからも延々と、私の中で続きそうです。

少なくとも、昨年、そば切り源四郎の森様と話していて、「十割蕎麦より二八蕎麦が美味しいと感じるこの頃のお客さんを、恨んでもしょうがないのではないか?」「二八より十割蕎麦と叫ぶ、私たちの方がおかしいのかもしれない???」という結論を、私なりの理解として持ち帰った記憶が蘇ります。

そば切り源四郎さんの蕎麦は、来迎寺ソバ種丸抜き粗挽きのそば粉を湯ごねで十割で打っています。このそば粉を、昨年分けていただき、水で打とうとチャレンジしましたが、跳ね返されたそば粉です。(今年も分けていただけたなら、湯ごねでそばを打ちたいと思います。)

さて・・・、、、 思い出話が長すぎました。ここまでは、訪問の前日に書いているのです。明日が楽しみで、余計なことを含めて、たくさん思い出してしまいました。

いよいよ、当日です。

来迎寺を求めて、いざ、源四郎へということで、仙台を発ちました。車中で、昨日再確認の連絡をしていないので、到着前に連絡しようかと考えているうちに山形に入り、大丈夫、用意してくれているはずと言い聞かせ大石田の次年子に到着です。昨年と変わらない店構えで、道路から少し高台に店があります。


暖簾をくぐり、店の中へ。挨拶早々に、「十割そばを予約していた者ですが?」と問いかけると。
「あれっ!!今日だっけ!!」という返事が全てを物語っていました。
良くないことへの直感は当たるもので、やはりでした。
しかし、リスクはチャンスへです。
「これから打っていただけますか?」と問い直しました。
「いま、打つから待ってて」ということに。
そこで、一押し、「打つところを見学しても良いですか??」
一間あって、「いいよ・・。。」
と言うことで、思いがけずに森様のそば打ち見学となりました。
これは面白かったです。お店の裏など滅多に見られることはありません。プロのプロとしての真剣なそば打ちを初めて観察させていただきました。

お客に乞われて粗挽き粉を分けるように挽いたそば粉と、店で出すそば粉は異なるようで、店のそば粉は、超粗挽き粉でした。この超粗挽きのそば粉は、一般の方が打っても蕎麦にならないので、少しだけ粗挽きの比率を落としたそば粉を提供しているそうです。昨年頂戴したそば粉は、この少しだけ粗さを抑えたそば粉だったようです。店主は、折角購入していただくそば粉なので、蕎麦になるようにとの計らいのようです。店で打って下さったそば粉と、提供しているそば粉は、ほんの少しだけ粗さが異なりました。

湯ごね際に、湯を投入してすぐに混ぜるということはしないそうです。ゆっくり待って、自然とでんぷんが固化するのを待ってから、混ぜたほうが繋がりが良いということです。これは、毎日この粉で湯ごねしている方のご意見ですので、大変貴重な方法だと、心にとめてきました。

このようなやり取りをしながら、あっという間に蕎麦が打ちあがりました。15分で打ち終わりです。早い。




出てきた蕎麦は、昨年の蕎麦よりは一回り太目の蕎麦でしたが、大変おいしい蕎麦でした。
この蕎麦をいただいて、丸抜きの粗挽きそば粉による蕎麦の美味しい理由が少し見えてきました。粉の粒度分布が大きなポイントなのだと。

特別に、超粗挽きのそば粉を頂戴して帰宅です。
来年もまた伺いたいと、店を後にしました・・・。

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