2018年4月26日木曜日

食べ歩き(140) 秋田みかわ 天ぷら 秋田市

秋田みかわ

今回は開始時間を遅らせていただいたので、到着するとカウンター席はほぼ満席で、既に天ぷらは開始されていました。カウンターでけでなく、小上がり席にも入られていて、北嶋親方は、大変忙しそうです。忙しいのは、良いことです。

席に着きしばらくすると、最初にトリ貝の刺身、シドケとコゴミのお浸し、行者にんにんくとヤリイカに温泉玉子黄身を合えた小鉢が出されました。行者ニンニクと玉子の黄身が大変良く合います。韮と玉子が良く合うのと同じように行者にんにくも相性がよさそうです。秋田はこの時期は山菜の宝庫ですですので、山菜の料理、特に天ぷらは最高です。今日は、秋田前の山菜天ぷらを秘かに楽しみにして伺ったので、幸先よく山菜のお浸しで、まずはそのものが持つ味を楽しませていただきました。天ぷらにするとこの味が凝縮し、油との相性でうま味が増すのが楽しみです。


さて、天ぷら開始です。
車エビを揚げ時間を変えて二つ続きました。揚げ時間で、海老のうま味凝縮と水分量の減少がもたらす違いがハッキリと分かります。どちらが好きかは、その方の好みによるでしょう。

天ぷらにもさまざまな物があります。私自身は、全くの素人ですが、天ぷら料理を次のように捉えています。天ぷらという調理方法を最大限発揮して、しっかり限界まで揚げきる方法。限界まで天ぷら調理を削ぎ落して、素材の生のうま味を活かす方法。よって、食材の熱が加わったところと生のところの両方のうま味を味わうことになる。素材自体に手を加えてよりうま味を増した素材を作り天ぷら調理法で最大限良さを引き出そうとする方法、などなど。色々な哲学と目指す方向があるようです。また、これらの何れかを哲学として、他のやり方を一部取り入れているのが現在の天ぷら店なのではないかと捉えています。私自身は、限界まで揚げきった天ぷらが好みです。

エビの頭が続きました。今日のエビの頭で感じたのは、前回に比べて胡麻油がほんの少しですが香りが立ったと感じました。好みで言うと、こちらの香り立ちのエビの頭が美味しいなと感じます。

実は、ここから山菜が続いたのでした。予想的中で嬉しい限りです。
山菜ホシアグラ、タラの芽、こごみ、ウドと山菜4連続でした。それぞれの山菜にて、味、香り、食感が変わります。また、揚げているのでそれぞれの山菜の味、香り、食感が強化されてうま味が増します。先付で出された山菜とこの山菜4連続を比較検討してみると、天ぷらにすると、山菜のうま味が凝縮してうま味が増すことと、香りが増すのでうま味が強化される食材なんだなと改めて感じました。何はともあれ、旬で産直の山菜の天ぷら食べ比べは嬉しい限りです。


続いて、今年初の稚鮎です。この時期に稚鮎ですかと尋ねると、「秋田の県北で鮎を養殖していて、そこから入荷します。」「県北の養殖鮎は、滋賀に送られ琵琶湖で放流されて捕獲されると琵琶湖産鮎となり高値になるんです。」のようです。秋田には、実は美味しい食材がいっぱいあります。鮎も、河豚も産地なのに知られていなのが残念ですね。
稚鮎は蓼酢おろしが添えられました。超定番ですが、これは理にかなった組み合わせなのです。鮎の苦みとタンパク質に、蓼酢の蓼の辛みと酢の酸味にだしのうま味が加わります。これにより、多くのうま味のレセプターを刺激するので、一層美味いと感じるのです。昔の方は、凄いです。科学的ではなく、感覚的に稚鮎には蓼酢を添えるようにしたのですから。揚げ具合、鮎の苦みと香りに蓼酢がマッチした大変良い天ぷらでした。

次は、富山産白エビです。前回は白魚でしたが、これが時期を過ぎ白エビになりました。白エビも美味しい食材でした。

メゴチ、はふんと紫ウニの大葉はさみ揚げと続き、ギンポが出ました。


ギンポは、天ぷら業界では、「銀宝を食べずして天ぷらを語る無かれ」「江戸っ子たるもの、借金してでも春は銀宝を喰え」と言われるほど昔から天ぷら向け食材なのです。しかし、食べたことが無かったので今回が初めてです。親方曰く「ギンポは処理が難しく、刺身でも焼いても煮ても食べると小骨が気になります。しかし、天ぷらでじっくり揚げることで小骨が気にならなくなります。ギンポの天ぷらは有名ですが、次期が短いです。」
穴子より身がしっかりしていてもっちりしています。大変おいしい食材でした。

鮑、墨烏賊、江戸前キス、ホタテ、大潟村アスパラガス、椎茸、紅あずまさつまいもが続きました。最期は、対馬産穴子で天ぷら終了です。

食事は、芝エビのかき揚げ天丼と山菜天茶をいただきました。甘味はあまおうのシャーベットでした。北嶋さん曰く「気持ち良い食べぶりで。」とお褒め or お叱りを頂戴して終了でした。


最後にいただいた、山菜かき揚げの天茶をいただいて感じたのは、だしに入れたことで山菜の香りが立つということでした。女性向けです。ここでアイデアが浮かびました。おそばの文化で「ぬき」と言う文化があります(江戸にも有ったのですが(東京には全くないわけでなく、メニューにある店もある)、今は釧路のお蕎麦屋さんを中心に北海道では普通のメニュー)。これは、天ぷらの温かいそばつゆ(かも南蛮等の)に、そばを入れないで出す、即ち、ソバが無いかも南蛮のような物です。これを、山菜かき揚げ天茶で出したら良いのではないかなと感じました。ちょっとしたメニューが看板になることもあるので面白いかもです。秋田発の呼び名、女性にはご飯が無いので抵抗が減るので食べやすい、何しろ天ぷらとしても美味しいし、吸い物としても一番だしに油が加わるのでうま味が増します。色々と広がるなと思います。

食後の雑談の中で、北嶋さんに話すと、「天吸」と言うのがあるのでそうです。これまでのキスの天吸とは異なる料理になるとは思います。なにしろ、だしはたっぷりでお茶漬けの量に山菜かき揚げを入れて香りが立つのを楽しむので。多分、誰かがそのうちに始めるかもしれませんね???   ウマイを追及している方がたくさんいるので。

北嶋さんの天ぷらは、前回に比べて美味しくなっていると感じました。もちろん食材が違いますが、ブレが少なかったと思いました。これから益々成長されると思いますので、楽しみなお店です。五月女親方と世代交代することを祈念してます。

2018年4月25日水曜日

食べ歩き(139) 日本料理たかむら 江戸料理 秋田市

先月に続いて秋田の日本料理たかむらへ伺いました。前回の鮟肝が忘れられません。
今回も前回同様の時間に伺いました。すでに先客がありです。
高村さんは、昨日骨折したと言いながら、・・・。
痛々しいギブスに包まれた左腕を抱えてます。転倒したそうです。右腕でないのが不幸中の幸いです。

八寸から開始でした。天然の子持昆布、車エビ、バイ貝、あさり玉子寄せ、もろきゅう。卵焼き。
一つひとつが、全てしっかりとした仕上がりです。つぶ貝かなと思ったのですが、バイ貝でした。似てますが、ゴツゴツ感が異なります。

二品目は、蕪餠です。中華の大根餅からヒントを得て和食用餠に取り組んでいるそうです。 蕪をだしで炊いて小麦粉とタピオカスターチで固めるそうで、崩れずに温度に関係なく成形しやすいのでこの組み合わせが良いそうです。これにトリフ塩と焼いたカスミを擦りおろしていただきます。なかなか良い味です。

今日は、秋田産の20kgの鮟鱇の肝です。凄い鮟肝でした。下処理の素晴らしさは相変わらずです。鮟肝のエグミゼロです。今日の鮟肝は、先月の物に比べて本当に僅かですが甘味を感じます。伺うと、鮟肝には、味醂と砂糖を使うそうです。その分量の違いかもしれません。前回、「わたしが、これまで抱いていた鮟肝の味」の概念を変えられた「たかむらの鮟肝」は健在です。かつ、デカくてラッキー!!

続いては、お待ちかねの吸い物でした。熊本産筍、きんめだい、バチコに姫チンゲン菜に「花山椒」のお吸い物です。花山椒なんて、いつ食べたか忘れました。高村さんによると、昔は良くありましたが、今は、京都の高級割烹でないとお目にかかることがないほど貴重な小さな春物です。これも、仕入値は半端ではなかった・・・。そうです。花山椒と鰹だしの香るお吸い物は、嬉しい一品でした。

次は、お造りでした。北海道産カレイの昆布締め、秋田産サクラマスのルイベ、墨烏賊です。サクラマスのルイベも、たかむらならではの味に仕上がってます。いくつかの下処理してからルイベにするので水っぽさはゼロで脂のりが絶妙です。カレイも捕れ始めていてこれからどんどん出てくる魚です。このカレイは、〆具合が良かったです。

焼き物は、真魚鰹の幽庵焼きでした。幽庵焼きは甘めに仕上がるので、好きな付け焼き方法です。確か北村祐庵という茶人家が考案したと言われていて、真魚鰹などを、醤油、酒、味醂を1:1:1であわせてユズを加えて漬け込んでから焼くので甘めに仕上がるのであったと思います。真魚鰹の幽庵焼きも美味しく仕上がっています。

続いて、「猪とリブロースのポタージュ」という料理名で良いのでしょうか???
これは、本日の一押しでしたし、これまで食べた肉を用いたポタージュで一番好きな物となりました。作り方を伺うと、とんでもなく手間と時間とコストがかかってます。
比内地鶏、スッポン、沢山の野菜、春トリフも入れて煮込み、これに猪を加えて煮込みます。野菜などは取り除き裏ごしして作ったポタージュスープでまた猪とリブロースを煮るそうです。猪の脂とリブロースが大変良く合います。猪の独特の臭いとエグミが全くなくなっていますが、猪の脂の持つ独特のうま味だけが残っています。こんな風に調理できるのだな?!と感心します。この猪とその他大勢の野菜からのうま味が一体となったポタージュドロドロスープが最高のうま味を持っただしになっています。こんな味のだしのポタージュスープは初めてです。野菜のうま味と猪のうま味が全体をまとめます。もう一度食べたい料理でした。

煮物は、三陸産鮑の蒸物にせりやアメーラトマトとカボチャを添えて。鮑のうま味が凝縮されています。

馬糞ウニのクリームコロッケに春トリフをすって乗せました。春トリフの香りを感じるとコロッケの揚げ物を感じてウニが追いかけて来ます。2口で食べるのが惜しいです。これは写真が無かった。

食事はワラビ擦りのジェノベーゼにイタリアンチーズをかけたたかむら麺。ワラビ擦りの独特の粘りが発揮された山菜ジェノベーゼでした。

デザートはマンゴープリンと柑橘

今回の一押しは、「猪とリブロースドロドロポタージュスープ煮込み」でした。「もう一度食べてみたい。」と話したら、「予約の時に、そう言われる方も居ます。」ということは、また、いただけるかもしれません?

2018年4月20日金曜日

桜(SAKURA) 平泉 岩手県

地水庵さんを訪ねて岩手県平泉町へ伺いました。世界遺産登録になり、色々なところが補修作業されているのでしょうか?駅から金色堂入口の途中の無量光院跡でも工事をしています。

平泉駅から世界遺産の金色堂に向かう道路沿いは満開を終えた花びらが風に揺られて飛んでいます。駅を出て少し行くと桜並木の始まりです。そこから金色堂の入り口まで続いていますので、結構長い区間をピンク色が彩ってます。
平泉の桜も、今年は早かったそうです。

食べ歩き(138) 日本料理e.(イーピリオド) 仙台市

日本料理e.

真っ白な壁が印象的な千葉さんの店です。若手で大変頑張られているお店です。今日の訪問時間中はカウンターを独占できますよということで、千葉さんの前の席に通されました。2階のお客さんと、1階のテーブル席のお客さんが居られるので、目の前の親方は忙しく動き回ります。

分けとく山で修業されていたころの同期の方が、四国でミシュランをとられたということで、ここの日本料理e.と、その他にも分けとく山から独立した方々が頑張られています。

千葉さんも、分けとく山のごはん料理である、炊き込みのご飯を出されます。これが残るとお土産にしてくださるのが、お得感と嬉しさを提供します。このご飯が、今日は何かな?と思いめぐらすのも楽しみの一つです。さて、今日は何でしょうか?

先付は、ホタテ、鮑、トリガイの土佐酢ジュレでした。土佐酢はしっかりとした味です。このように、これが土佐酢だという酢の物は、最近は少ないので返って新鮮です。

次はアスパラガスの穴子巻き天ぷらとこごみの天ぷらでした。アスパラと穴子で巻いて揚げている美味しい揚げ物です。ただ、アスパラの主張が強いので、穴子とアスパラを一緒に揚げる必要性があるか?と少しだけ疑問もありました。小さい揚げ物なので、二つを別々にして揚げて、一緒に口に入れ口内調理も面白いのではと閃きました。

八寸です。
シドケとヤリイカ
ツブの煮もの
空豆
チーズの桜の香り付
フォアグラの茶碗蒸しに青のりをかけて
山菜天ぷら
玉子焼き
一つ一つに手を抜かずに、しっかりと造られています。お酒を飲む方は、これをゆっくりと一つずついただかれるのだと思います。お酒を飲まない人にとっては、ゆっくりいただいても、お酒を飲みながらのゆっくりとは比べ物にならないほど早くなってしまいます。今日は、ゆっくりゆっくりと、一つずつを楽しみました。

お吸い物は、アイナメにうすい豆(えんどう豆の一種)の擦り流しです。お吸い物のだしは、昆布をしっかり効かせて鰹節でも引いた合せだしです。日本料理の楽しみには、お吸い物があります。個人的には、ここで出されるお吸い物がどうなのかが一番気になります。ここでホットしますし、味への思考、味の嗜好、味の指向が読み取れそうな気がしています。個人的には、これを「三しこう」とでも呼ぶと覚えやすいかなと思っています。

お店、あるいは、親方の味に対する考え方が良く出る料理です。また、味の好き嫌いも理解しやすい料理です。加えて、お店や親方の料理の基礎なので、これから先の方向を示してくれると感じます。日本料理では「だし」、中華料理では「湯」、フレンチやイタリアンでは「フォン」と言うことになります。各店、各シェフが毎日整える基本の味なので。これをいただきながら、千葉さんの料理の礎をいただきました。美味しいアイナメと一緒に。

向付は、マコガレイ、石鯛、根室産海胆のお刺身でした。昆布で〆ていないお刺身は、久しぶりでした。この直球勝負は面白かったです。もちろん、良い食材で美味しいです。マコガレイは今シーズン初でした。これからの季節は、徐々に鮃に変わって鰈が美味しくなってきますね。

サワラ西京焼きにプチヴェールが添えられています。春の魚の鰆ですが最も美味しい時期は冬の期間ですので、そろそろ最後の時期になります。定番西京焼きの一つですが、美味し鰆でした。

金目鯛の揚げ出しと山菜のみずです。キンキは、焼いても揚げても美味しいですね。また、揚げ出しの汁が抜群に美味しかったです。

鯛の子・ふき・筍の煮ものは、大変優しい味に仕上げています。前の料理の揚げ出しの汁とは異なり、だしも抑えながら料理されています。食材がそれぞれ主張が強いので、炊くことでそれぞれの食材の主張が失われない程度に味を入れて三者を調和しています。煮汁をスプーンを使って最期までいただいてしまいました。

ヤリイカの焼き物となの花は、ビジュアルが綺麗な仕上がりになっています。食用の花を用い、黄色には卵を使っているようです。最小限の味付けで、イカと菜花でした。

メインは、仙台牛のローストビーフに玉葱とブロッコリー添えでした。肉の火入れは前回同様に良い加減です。よって、肉の持つうま味が凝縮されていてそのままいただきます。この肉であれば、ソースを使うのも面白いかもしれないと感じました。和のソースというのは確立していないので、再現性豊かな和ソースを開発すると面白いかもしれません。ああるいは、暖かいだしの中に入れてしまうのも面白いかもしれません。冷たいだしジュレも良いか??

さて、本日の御飯です。裏から土鍋が出てきました。千葉さんが土鍋の蓋をあけると、景色はピンクです。心の中で「やったーー。」です。桜えびと新生姜の炊き込みご飯でした。「やったーーー」の理由は、桜えび大好き、しかし北海道ではあまり見ない。この時期は関東では桜えびでしょう。毎年、生桜えびを食べたいと思っていましたが、その夢かなわずでしたので、この春先にピンクの生桜えびが頂けたのは幸せです。

親方曰く、「桜えびは生のものと、炒って香りを出したもの両方使っています。」そうです、そうすると香りと味ともに二種類の桜えびを同時に味わうことができるのです。これに、新生姜が主張してきます。バランスが良いです。
残りのご飯はおにぎりにしてくださいました。翌朝にこれをいただいたのですが、時間がたつと桜えびの主張が低下し、新生姜の主張が強くなることを経験しました。翌日まで楽しむのであれば、少しだけ新生姜の量を下げると面白いかもしれません。
来年も食べたいですね。来年入る時期がわかったら連絡を貰うことにしよう。

デザートは、果物と三宝柑のシャーベットでした。三宝柑は初めていただきました。美味しい果物です。

2018年4月19日木曜日

食べ歩き(137) KUROMORI 中華 仙台市

仙台のKUROMORIさんへ再訪問です。
昨年末に伺って以来、久しぶりになりました。
内装を変えられたとそうです。また、スタッフも変わられたそうです。
秋田の高村さんとのコラボのことは高村さんから伺っています。高村さん曰く、「黒森さんの成長が加速度的に早まるのではないか?これからが楽しみです。」4ヵ月が経ち、どんな料理になっているのか?楽しみにして伺いました。

来月も予約していて、来月の料理は今日の訪問時に相談しましょうということです。黒森さんに何かアイデアがあるのかもしれません?
仙台空港駅近郊で仕事を終えて、評定河原の和菓子やさんを経由して、一時間ほどかけてゆっくり歩いて行きました。

門を開けたのが予約の10分前でした。今回は、遅刻せずに間に合いました。カウンターが一新されオーク調の色合いに。席数は、7or8です。店内には黒森シェフとソムリエの小岩さんが居られます。

テーブルに用意されたメニューを開くと、前回とは全く異なる内容のの記載です。Oh!!すでに内容が大きく変わっています。これは、楽しみです。

最初は、石巻産渡り蟹の老酒漬けです。渡り蟹の香りと味わいが強烈に出迎えてくれました。渡り蟹は手で掴み殻の上からかぶりついて絞り出しました。いきなりお行儀悪いと叱られそうです。濃厚な渡り蟹のスープで口の中が満たされます。

続いて、中華でも、八寸???です。
角田野田鴨のブラッドオレンジ冷菜、これは、鴨独特の臭いを除いた処理をしているのではないかと思います。鴨ですが、繊細は味の鴨です。
築館産漢方牛タンの冷菜は、少しだけ牛の脂を感じる一品でした。
つぶ貝の香り煮は、醤油で良く煮込まれていて柔らかいつぶ貝に仕上がっています。
南三陸産活鮑の冷菜は大変柔らかく蒸された鮑で、下に敷かれた青菜に胡麻油がまぶされているので、ゴマの香りがほんのりしました。胡麻の香りと一緒にいただきました。

石巻産鰹と新玉葱の冷菜です。生鰹を中華醤油とピーナッツオイルで調整しています。生の鰹の癖が消え、ピーナッツオイルでコーティングされた鰹は美味しかったです。オリーブオイルとの鰹とは異なり、ピーナッツオイルも美味しいです。

石巻産真鯛の昆布〆の椒麻ソース。真鯛は昆布で浅めに〆て、ほのかに昆布のグルタミン酸のうま味の香りがします。その昆布〆に椒麻ソースが合います。昆布のグルタミン酸と椒麻ソースのうま味が相乗効果で増すからですね。

気仙沼産ふかひれと石巻産雲丹の餡かけの中に小龍包が居ます。シェフ曰く、「最初は、小龍包を崩さずに餡だけを楽しんでから、小龍包を崩して混ぜて食べてみて下さい。」という指示に忠実に従いました。ウニのスープ餡ですので旨いです。それに小龍包の中の肉汁が混ざり、喧嘩しないのかなと思いましたが杞憂でした。海のウニと肉汁が混ざると、これまた美味しさ倍増です。この方法は色々と応用できそうな組み合わせとアイデアです。

角田齊藤豚の炭焼き叉焼は、前回もいただきましたが、肉の甘味が抜群ですし、果物の香りもします。本当においしい叉焼です。

ここで、シェフからメニューに無い品ですと出されたのは、バーベキューソースで焼いた骨付きスペアリブでした。焼き具合と骨の周りの脂身のうま味が凄い一品でした。滅多にやらないということですが、これも、一品にしてよい内容です。

色麻の白菜つぼみ菜の炒めは、野菜のうま味をほんの少しだけとろみ付けした上湯スープが野菜の香りと菜の優しい味を強調します。上湯と野菜が美味しいです。

築館産漢方牛ほほ肉の赤ワイン煮は感心するほど柔らかく煮込まれています。もちろん、どこも荷崩れしていないのです。ここまで柔らかい肉なので、フォークで押すと崩れます。でも、出された時のお皿の上の煮込み肉はしっかりとした形をしていました。
どう煮込むのですか?と尋ねると、「中華の煮込み方法は採っていない。洋の煮込みで最後まで煮込んで、最後の処理だけを中華で仕上げています。」とのことです。よって、ワインで煮込んで、最後に砂糖と醤油で味付けして終わりのようです。しかし、火を入れて、休ませて、また火を入れ休ませるの繰り返して洋の煮込みで仕上げた品のようです。これは、美味しいです。

ここで箸休めで、超アッサリ料理の「くらげとうるいとルッコラの和え物」でした。前のワイン煮込みの余韻をここでリセットしてくださいという意思を感じます。胡麻油で和えているのですが、大変アッサリした和え物です。

リセットされた舌に、ダブルメインのように「気仙沼産青鮫ふかひとスッポンの煮込み」です。フカヒレの上湯煮込みに、煮込まれた大きなスッポンが隠れています。フカヒレは金糸が上湯一面に散らばっています、その中に大きな、これも大変柔らかく仕上げられたスッポン肉が隠れています。
このスッポンの煮込み具合、前の料理のほほ肉のワイン煮込み共に、食材の状況に合せてギリギリのところまで煮込んでいます。決して崩れないように、かつ、食べごろの柔らかさに煮込むところは流石です。

デザートは杏仁豆腐のブラッドオレンジソースでした。この杏仁豆腐の仕込みは大きく変わったそうです。前は数日分を仕込まれていたようですが、今は、毎日その日の分だけのジャージー牛のミルクを大崎から送ってもらい、仕込んでいるそうです。やはり、それが美味しいそうです。

最後に、おまけの中国茶の蒸しパンもいただいちゃいました。

ソムリエの小岩さんが入られ、相互に提案しながら大きく変わろうとしているKUROMORIです。既に、変わりましたが、益々の変化が非常に楽しみです。中華食材の宝庫である震災後の宮城県で店を出された意義を芯に持たれたお店がどう変わっていくでしょうか?

2018年4月16日月曜日

食べ歩き(136) 天ぷら田ざわ 函館市

函館の天ぷら田ざわの田澤宏一さんの店にやっと伺うことができました。
近くて遠い店です。既に閉店を決めていると伺っています。予約の連絡を入れた際に、今年いっぱいで店を閉めようと思っているというお話を伺いました。

今年は週末のみ店を開き、これまでお世話になった方を対象にしたいと言われていました。数年前に交通事故にあわれていて体調が本調子ではないそうです。北海道だけでなく日本中にファンの多い方なので細く長くやっていただけると良いですが。

今回は、何度も連絡しましたが予約を受けるのは難しいというお話と、こちらの日程がなかなか合わないこともあり、だいぶご無理を申し上げて伺うことになりました。そう考えると、もしかすると最後の田澤さんの天ぷらになるのかもしれません。年内にもう一度伺えると良いのですが???それは叶わない可能性が高そうです。

6時からの予約でしたので10分前にお店に到着。他のお客さんが全員6時30分から開始ということです。そうであれば、一緒の方が良いので30分遅らせて同時スタートでお願いしました。他のお客さんは東京から来られた二人と、6名の地元の方々です。

皆さんが集まるまでの30分は、親方の田澤さんのお話を伺いました。事故後の体調が良くないこと。本当に年内で店を閉める予定でいること。現在は、これまでにお世話になった方々へのお礼のつもりで、それらのお客さんだけを対象に細々とやっていること。昨年の11月にそばを打つのを止めたため、皆さんからおしかりをいただいていること。仕入れ先のこと。名古屋、大分の漁師さんに伺い、お願いして魚を仕入れていること。友人の寿司一の横澤さんや蕎麦打ち名人高橋邦弘さんとの交友のこと。お魚が捕れなくなり、本当にいないので仕入れに困っていること。醤油の仕入れ先のこと。油の仕入れ先では、東京の有名店には地方にはこの程度の油で十分だみたいな対応を受け、かどや製油を使用していること。地方で商売をやることが難しいこと。地元とのかかわり。芸能人やマスメディアの取材への対応のこと。本当に、今はこれまで長いことお世話になった方々に御礼の挨拶回りをしていることと、御礼のつもりで店を開いているので、一見さんは全てお断りしていること。話したことを思い出しながら書き出してみると、30分で色々と話したな?!と思います。殆んど親方が話されていたので、お元気な証拠です???

全員が揃い、いよいよ開始です。
最初から超珍味でした。なまこ生くちこ(卵巣)でした。この時期だけの生くちこで、今から2週間程度の期間だけの珍味とのことです。塩加減とたぶんレモンの酸味がほどよく美味しいくちこでした。

二品目は、穴子の茶碗蒸し。

お造りは、インドマグロ、ふぐ、鯛、近海のサヨリ、ウニです。

ここから天ぷらの開始です。
エビ:しっかり揚げています。てんぷら粉は最小限の量で揚げています。
エビ頭:頭の固い部分は取り除き、カリカリ感は多少なくして、柔らかくて旨味の多いところだけを揚げています。食べやすくて美味しいエビの頭でした。

タラの芽:アッサリと最小の天ぷら粉にて揚げています。

ヒメゴチ:肉厚でこちの旨みを非常に感じる魚です。三川湾の漁師から直接入れている魚で、 築地でもあまり出回らないそうで、名古屋の料亭3店とここだけというのが売りです。尾びれが赤くて先まで揚がっていてフォルムが綺麗です。カリカリと美味しい尾びれ部分に、身は甘みがあり絞まっていて美味しい魚でした。

空豆は、大好きです。これも最小限のてんぷら粉で3個のそら豆をまとめて揚げています。揚げ色は白い状態です。

毛蟹と焼きウニのおぼろ昆布巻き:毛蟹と焼きウニの両品がそれぞれ主張します。また、おぼろ昆布の主張も強い一品です。それぞれの品が強い味を示し、それぞれを同時にかんじながらいただけます。

ふきのとうに赤生エビのしんじょう詰め:これも、ふきのとうの苦みを中心とした旨みと、赤エビの甘みを同時に感じられる一品でした。

甘鯛の天ぷらを自家製ポン酢で:このポン酢は親方の自家製で、カボス8割程度にジャバラ2割程度を手絞りにして、その他にレモンやその他の柑橘を加えて寝かしたものです。大変優しいポン酢になっています。ポン酢を使う機会は多いので、自家製もありです。時間がたつに連れて角が取れてきて美味しくなるそうです。

少しだけ焦がして揚げた筍 :少し焦がすことで、香りも楽しんでくださいとのことです。

あえてレア仕上げの墨烏賊 :半生の墨以下の美味しさを味わえます。

アスパラガス:太いアスパラガスの天ぷらも、可能な限り少ないてんぷら粉で揚げています。

穴子:しっかり揚げ切った穴子ではなく、身に多くの水分を含み、ふわっとした穴子の食感を残した穴子の天ぷらになっています。よって、天ぷらの回りのてんぷら粉も、少し柔らかい食感を残します。穴子の旨味や柔らかさを十分に活かした美味しい天ぷらです。ギリギリまで揚げきるみかわ流とは異なる美味しさを提供します。

ここまでは、コースの天ぷらで、この後は食事とのことです。もう少し試してみたいので、追加食材にあるキスとホタテをお願いしました。
キスは、丸く上げています。開いて骨をとり上げる際に腹を着けて揚げています。
ホタテは、この時期ですので、そんなに美味しいものはないだろうと思い、磯部にしてもらいました。食後に、親方もこの時期のホタテは・・・。というお話をされていました。お話の通りで、少し水分を含む柔らかすぎるホタテでした。


ご飯は、小エビの混ぜご飯と蛤の京都サクラ味噌と赤味噌をブレンドした味噌汁でした。サクラ味噌の香りを楽しめる味噌汁で、だしは弱めです。

王道の天ぷらネタ、ここでしかいただけそうにない天ぷら、創作天ぷらと田澤親方の天ぷらは楽しかったです。食材の水分をコントロールしてあえて抜き切らないで提供します。これが、田澤流での揚げ具合なのだと思います。しっかり揚げきった天ぷらとは一線を画す天ぷらかもしれません。

メモ
価格:15,768円
熱量:約1,660kcal